その7 初診の日(下) (2007.10.9)

[登場人物]

八五郎　　先生　　八五郎の家内

★そうですか、そうですか。よっく分りました。それはそうと、この問診表に書いてもろてるお酒の量はこれ、間違いやおまへんわなぁ。ふんふん、間違いない。これわこれわ、相当なんですな、お呑みになってた。それをピタッとおやめになった。

■ウィスキーはピタッとやめましてんけどね。日本酒の晩酌だけはチョロッとだけ頂いてまんので。まあ言やぁ、ピタッチョロでっかな。★はあはあ、そうですか。ピタッチョロね。「チョロピタッ」なら何にかの商標に使えそうやが・・・。■ ? ? ? ?

★あなたの場合(ばやい)何ですな、確かにSADもありますけれども、今の症状は主にアルコールの離脱症状でしょうなぁ。どうですかな、しばらく抗不安剤を飲んで頂いて様子をみましょうかな。■先生、治るもんならこの際SADもちゃんと治しとおまんねん。その覚悟で来とりまんので。

★そうですか。分っかりました。ほな、こうしましょ。SSRI、これはセロトニンの再取り込みを阻害する薬でしてな、じんわり効いてきます。効いてきたなぁと実感できるんはひと月後くらいからでしょうなぁ。初めは一日50mgから、徐々に増やして一日150mgまでいきます。これが充分に効いてくるまでは、ベンゾジアゼビン系の抗不安剤を頓用として併用します。朝と夜一錠ずつ。

■先生、その抗不安剤ちゅうのは癖になりまへんか。★そう、それが問題でしてな。■わたい晩は別に要りまへんねん。晩は檀家参り行きまへんよって。★ほな、一応一日二錠あて処方しますけれども、飲み方は貴方(あ～た)にお任せしましょ。β遮断剤はこの際もう要らんでしょう。■わたいも長いことそれの世話になってきましてんけど、どうも喉の筋肉が強張るちゅうのか、声が出しにくなるような気がしてましたんや。わたいにはあんまり向いてないんかも知れまへんわ。

★血液検査しときましょうかな。相当呑んでおられたようですからな。ちょっと準備しますで。■おっ、やっと医者の道具らしいもんが出てきたがな。注射器と腕にかます枕。★今までに血液検査お受けになったことはありますかな。

■へえ、ミー子が死ぬちょっと前に、えらいしんどなったもんでっさかいね、掛かり付けのお医者はんでしてもらいましてん。★どないでした結果は。■わたいは肺炎でも起こしてしんどいんかと思てましてんけど、お医者はんが言わはんのでは肝臓がへたる寸前やったそうで、γGTPちゅうのが638あって。

★何ですて!! ■先生、危ないっ、あぶない! 注射針持ったままびっくりしなはんな。★いや、失礼を・・・。そらぁ、えらい数値ですなぁ。さっき処方した薬、夜まで飲まんように。今回もそんな値が出たら急いで電話を入れますでな。はぁぁ、638ですかぁ。ムザンヤぁ、ですなぁ。■先生、なんか妙～な癖おまんなぁ。

★これで今日の診察は終わっときましょ。次回は1週間後。●先生、まことに聞きにくいんでっけどね。晩酌一合は堪忍してもらえまへん・・や・ろ・か。★ははぁ、まあねぇ、お勧めはでけまへんが。一合、守ってくれはるんなら。■守りまっす!!  先生えぇお人や。大好き!  ほな、また来まっさ。さいならぁ。

■ただいまぁ、帰ったでぇ。○あんた、こんな遅うまで何処行てなはったん。診療所から帰ってきたと思たらまたバイクで飛び出してからに。暗うなってしもてんのに心配しまっしゃないか。

■すまんすまん。ええ先生に出会うて治療の道筋も見えたと思たら、なんやいっぺんに気分が軽うなって。ほれ、あの酒屋のおばあちゃんに頼まれてるやろ泉南の墓の建碑式。ちょっと下見に行ってきたんや。○えーっ、バイクで泉南まででっかいな。そんな無茶しなはんな。

■まあ、ええがな。熱燗で一合つけてくれるか。サントワマミーの逆バージョンや。○何ですねん、それ。■♪目の前がぁ明るなるぅ～♪○きょうびの若い子ぉら、そんなん解りまへんやろ。■「わっかんねぇだろうなぁ」、ちゅうのもこれまた「わっかんねぇだろうなぁ」。

〔補　足〕

・処方された薬(1週間分)
SSRI・・・デプロメール25mg  14錠
ベンゾジアゼビン系抗不安薬・・・ソラナックス0.4mg　14錠
胃腸薬・・・ガスモチン3mg　 21錠
            ガスモチンはあまり服用しなかった。

　　ガスモチンの情報。参考URL

　　http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se23/se2399010.html

・クリニックに置いてあったSAD関係のパンフレットを、家族への説明用に持ち帰った。SADはまだまだ社会的に認知されていないので、これは役に立った。

・SSRIが効いてくるまで息子には法務で負担を強いることになるが、息子は快く了承してくれた。

・晩酌一合を許可してもらったので、大好きなお茶はやめることにした。SSRIはカフェインが肝臓で分解されるのを阻害するため、カフェインが体内に留まりやすくなる。先生への陰ながらの義理立て。
この注意事項はもっと重要視されてもいいと思うのだが。
参考URL　http://fuku.life-nice.com/cat0002/1000000017.html

・「わっかんねぇだろうなぁ」・・・松鶴家千とせのギャグ。「わかるかなぁ・わかんねぇだろうなぁ」で一躍スターになった。

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