2011年2月27日日曜日

その1 ウィスキーとの別れ (2007.9.1)

[登場人物]
八五郎  亀さん(八五郎の学生時代からの後輩)

●八っつぁんいてるかぁ。もしもし、いてるか。もしもし。■亀さんやろ。いつも声掛けんと上がってくるのに、何そんなとこで「もしもし」言うてんねん。さっさと上がっといで。●はあ? えらい元気やがな。どないなってんねん。■病気やとでも思てたんかいな。●えっ、死にかけちゃうの。吉(よっ)さんからあんたがウィスキーやめたちゅうて聞いたもんやさかい、てっきり。■何かえ、わしがウィスキーやめたら死にかけかい。

●普通の人なら別にどうちゅうことはないで、せやけどあんたはそうはいかん。ウィスキーのこと生命の水や言うて、モーニングブレイクや言うてはウィスキー、昼間もお茶代わりにウィスキー、晩酌で日本酒呑んでる時以外はいつも片手にウィスキー。ウシュクベリザーブを年に一グロスも消費するやて、表彰もんやで。そんな人間がウィスキーやめたちゅうことは、こらぁもう死にかけに違いない、今のうちに悔み言うとこ思て・・・。

■悔み? そら死んでからのこっちゃ。見ての通りピンシャンしてるがな。●ははぁん、わかった。空元気で人安心さしといて、ころっと逝ってびっくりさそと思てるな。あんたはそういう人や。■理由(わけ)言わんとわからんやろけど。●あっ分った。金が無うなった。とうとうウィスキーで身上潰したか。■違うっちゅうねん、実わな。

●みなまで言いな。上(かみ)さんにどやされた。「ウィスキーやめなんだら放り出す」ちゅうて。■黙って人の話が聞けんか、亀のくせにせかせかしてからに。実わな、こないだバイクに乗ってて飲酒検問に会うてな。●ほれみいなやっぱり、酒気帯びでごっつい罰金とられて金無うなった。■喧しいわ、人の話は終わりまで聞けっちゅうねん。風船はやったんやけども、基準値まではいかなんだ。

●ほなそいでええがな。何でウィスキーやめるちゅな理不尽なことを。■風船膨らましながら思たんや。これで新聞に載ったら、檀家にも迷惑を掛ける、家内や息子夫婦も恥をかく。よし、もうウィスキーはやめよ、そない決めたン。●へぇー、そら感心な。■わかってくれたか。●わかったわかった。ほで、ウィスキーやめてブランデーにでもすんの。

■わからん奴やなぁお前は。●冗談やがな、まあ、そないしとこかい今日のとこは。■今日のとこは? ●あんたのこっちゃ、どうせ一週間、いや五日、いや三日と続かんやろ。これがほんまの三日坊主や。■ぬかしたな。●まあまあ、怒りないな。しかし、こらあおもろい。あんたの禁ウィスキーが何日もつか、皆で賭けしたろ。善は急げや、先ずは吉(よっ)さんとこ行てくるわ。ほなごめん。

■おい、待たんかい。おい。ああ、行てまいよった。落ち着きのない奴やで。これがほんま、落ちの着かん話。

〔補 足〕
・八五郎 1949年生れ。高校教師を八年間勤めた後、自坊の住職となる。
・禁ウィスキー開始  2007.8.30 日本酒による晩酌は例外であることに注意。
・●■などの区切りをはじめとして、文章スタイルのすべては、読む上方落語[世紀末亭]のパクリ。上方落語ファンの方なら是非一度「世紀末亭」をお訪ねのほどを。http://homepage3.nifty.com/rakugo/index.htm




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